11月になり、季節のうつり変わりと共に、店頭に並ぶ旬のフルーツも変わってきました。そのなかでも今日は、食べごろを迎える山形県産の人気の洋梨、ラ・フランスを使った、デザート感覚のカクテルをご紹介いたします。
毎年この時期になると、ラ・フランスを使ったフレッシュ・フルーツ・カクテルをお出ししているのですが、今年は、どんなカクテルにしようかと考えていたところ、あるデザートがふと浮かびました。
フランスのデザート「ポワール・ベル・エレーヌ」
それは、フランスのクラシカル・デザートの1つ、ポワール・ベル・エレーヌ(洋梨のベル・エレーヌ)。「近代フランス料理の父」と称されるシェフ、オーギュスト・エスコフィエ氏が考案したもので、洋梨が主役の、見た目も美しいデザートです。
ベル・エレーヌという名は、1864年初演されたジャック・オッフェンバックのオペラッタ「ベル・エレーヌ(美しきエレーヌ)」からきていて、 エレーヌは劇中に出てくる美女の名前です。その名がつけられているだけあって、見た目も美しいデザートとして、フレンチの世界では有名で人気のデザートです。
皮をむいて、バニラビーンズやレモンと一緒にまるごとシロップ煮にした洋梨を、バニラアイスを添えたお皿に立たせるようにのせて、温かく艶のあるチョコレートソースをかけて仕上げるという、シンプルかつエレガントな逸品。あまり馴染みがない方も多いかもしれませんが、洋梨・チョコレート・バニラの風味が一体となることで、美味しさが広がるデザートです。
今回はその味わいをイメージして、カクテルで表現してみたいと思います。
まずは自家製バニラウォッカを作成
ラ・フランス自体は、本来のポワール・ベル・エレーヌのようにコンポートにはせず、フレッシュな状態でカクテルにしたいので、代わりにベーススピリッツの方にバニラの香りをつけます。使うのはフランスにちなんで、シロックをチョイス。シロックはよくある穀物由来のウォッカとは異なり、フランス産の白ブドウを原材料につくられているウォッカなので、フルーツとの相性は間違いないです。
シロック1本(700ml)に対し、バニラビーンズ(鞘)2本、ドライレモンスライス1枚を入れて、3日ほど漬け込みます。レモンスライスを入れることで、バニラの甘い香りの中に爽やかな風味が加わります。漬け込んだあとはコーヒーフィルターを通して濾過。ベースのバニラウォッカの完成です。

ガーニッシュづくり
次に、カクテルに添えるガーニッシュ、ポワール・ベル・エレーヌをイメージしたチョコがけのドライ・ラ・フランスを作ります。まず、ラ・フランスを薄くカットし、ディハイドレーターにかけてドライ・ラ・フランスを作ります。約57℃で18時間ほど乾かしたら取り出し、完全に冷めたら、テンパリングしたチョコレートにディップして、冷蔵庫で冷やしたら完成です。

カクテルレシピと作成手順
- 自家製バニラウォッカ 20ml
- ラ・フランス 1/2コ
- フレッシュ・レモン・ジュース 5ml
- シュガー 1tsp
- チョコレートソース 適量
よく熟れたラ・フランスを半分にカットし、皮をむいて適当なサイズにカットしたら、自家製バニラウォッカとフレッシュレモンジュース、シュガーと合わせて、ブレンダーにかけていきます。ラ・フランスの果肉がとろとろのピューレ状になるまで、しっかり回します。
あとは氷をいれて、ボストンシェーカーで冷やし混ぜたら、バーズネストを通してグラスに注ぎ入れます。バーズネストは目が粗めにできているので、残したい果肉は濾さずに、粗い氷の粒などが入るのを防いでくれます。仕上げにチョコレートソースを液面に描く様に垂らし、さらに優美さを出すために、金箔をちらします。作っておいた、ガーニッシュとセルフィーユの葉を飾ったら完成です。

飲む場所によって、口の中に入ってくるチョコレートソースの量が変わるので、味の変化を楽しみながらお召しあがりください。ガーニッシュをかじりながら味わうのも、食感が加わっておすすめです。アルコール度数も比較的優しめなので、スイーツ好きな女性のお客様に、ぜひお試し頂けたらと思います。
以上、昔フレンチレストランで働かせてもらっていた頃を思い出しながら、このカクテルを作ってみた小林がお届けいたしました。