こんにちは、川口です。
皆さんはベアードビールをご存知でしょうか?静岡県修善寺に醸造所を構える、日本を代表するクラフトビールブランドです。アメリカ人醸造家のブライアン・ベアード氏が妻の沙知さんとともに2000年に創業し、いまや国内外のビール好きから熱い支持を集めています。
先日そんなベアードビールの修善寺ブルワリーガーデン12周年、そして醸造所見学に参加してきました!今回はその見学で教えていただいた、醸造の裏側をたっぷりとご紹介します。これを読んだら、きっとベアードビールが飲みたくなるはずです。

3種類の酵母が、味の個性を決める
まず驚いたのが、ベアードビールでは3種類の酵母を使い分けているということ。酵母というのはビールの発酵を担う微生物で、種類や発酵温度によって生まれる香りや味わいがガラッと変わります。
最も多く使われるのが「スコティッシュエールイースト」。全体の6〜7割のビールに使用され、20度で約2週間発酵させます。汎用性が高くバランスが取りやすい酵母です。次が「ノースアメリカンラガーイースト」で、12度という低温で2〜3週間かけてじっくり発酵させます。そして3つ目が「ベルジャンウィート」というベルギー系の酵母で、28度という高温での発酵が得意です。
醸造担当の方が、酵母を人間の出身地に例えて説明してくれました。「北国出身の人が寒さに強いように、それぞれの酵母も得意な温度が違うんです」と。なるほど、これはわかりやすい!
発酵温度が変わると香りも大きく変わります。低温発酵では香り成分(エステル)が抑えられてスッキリとした飲み口になり、高温発酵では酵母由来のスパイシーさやフルーティーさが際立つ。ビールの個性は、温度ひとつで大きく変わるんです。

一次発酵後は酵母の「バトンリレー」
一次発酵が終わると、円錐形のタンクの底に沈んだ酵母を抜き取ります。最初に10キロ投入した酵母が、発酵中に40〜50キロにまで増えて回収されるというのだから驚きです。回収した酵母は必要な分を残して、次のビールの仕込みにそのまま使われます。生きた酵母のバトンリレー、いい言葉ですよね。

ドライホップ工程——香りへのとことんなこだわり
発酵を終えたビールを15度まで冷却したあと、ホップを再度投入して香りを移す「ドライホップ」という工程があります。これがまた贅沢で驚きました。例えばライジングサンの場合、20リットルのビールに対してなんと9キロものホップを使用。5種類をブレンドして、1日6時間×3日間かけてゆっくり循環させます。
さらに「トリプルドライホップ」と呼ばれる手法では、この工程を3回繰り返します。ホップハボックインペリアルペールエールやバカ野郎エールがその対象で、あの圧倒的な香りの秘密がここにあったんだと納得しました。

横向きタンクで熟成。縦向きの3倍速で澄んでいく
発酵を終えたビールは、横向きのラガータンクで熟成させます。2度まで冷却することで液体に溶け込んでいた不純物が沈殿して除去されるのですが、縦向きより横向きのほうが沈殿距離が短くなるため、3倍のスピードで澄んだビールに仕上がるとのこと。熟成期間は1週間から最長2ヶ月。じっくり時間をかけて、雑味のないクリアなビールを作り上げていくんです。
顕微鏡で酵母をチェック——セルカウントという科学
回収した酵母は、次の仕込みに使える状態かどうか確認するため「セルカウント」という品質チェックを行います。酵母を100倍に希釈して顕微鏡で観察するのですが、青い染色液を使うのがポイント。死んだ酵母だけが青く染まる性質を利用して、生きている酵母と死んでいる酵母を見分けます。数千億匹の酵母の中から必要な量を正確に算出する、職人技と科学が融合した世界です。
炭酸は「自然発酵」でガスは一切注入しない
熟成が完了したビールはブライトビアタンクに移され、1%程度の砂糖を加えたうえで瓶や樽に詰めて二次発酵させます。炭酸ガスを人工的に注入するのではなく、瓶や樽の中で酵母が糖分を食べてCO2を発生させることで、自然に炭酸を生成させます。
二次発酵室は年間を通じて20度に保たれており、1〜3週間かけてゆっくりと炭酸が生まれます。ハイアルコールのビールはさらに長期間。さらに特別な手法として、砂糖の代わりに「発酵開始3日目の麦汁」を使う場合もあるそう。元気な酵母と豊富な栄養素を同時に補給できるため、疲れた酵母のバトンタッチがスムーズにできるとのことでした。

将来的な夢として語ってくれたのが、修善寺産の麦・麦芽・野生酵母を使った「完全地産ビール」の実現。すでに富士山麓での麦栽培研修に参加し、地元の野生酵母の採取も検討中とのことで、そのビールが飲める日が今から楽しみでなりません。
ビールって、こんなに奥深いんですよね。改めてそう思わされた一日でした。BAR Zolddichでもベアードビールを少数ですが入荷しました。この機会にお試し下さい。それでは、ご来店をお待ちしております。



